法務という仕事
法務は、企業活動全般に関わる法的要件に関わる仕事です。現在企業が遵守すべき法的規制は多数あり、特に国際的な企業などは、日本の常識は通用しない為、あらゆる法的リスクを想定した事前の対応が必要となります。
仕事内容を大きく4つに分けると「契約法務」「商事法務」「戦略法務」「コンプライアンス」があります。
「契約法務」は、企業活動を円滑に進めるための基本的な売買契約から、事業再編・買収・合併など、契約全般を行います。
「商事法務」は、株主総会や取締役会などの運営実務を行うことが主な業務です。
「戦略法務」は、事業提携・合併・買収・売却などを、経営的側面と法律的側面から、自分の企業側に有利になるよう戦略的にサポートする業務です。
「コンプライアンス」は、法令遵守をした形で事業が行われるように、社内マニュアルの作成・社内教育・関連法改正時の業務の見直しなどを行うことが主な業務です。
また、大企業になれば、内部統制システムの構築も行います。その他にも訴訟法務もありますが、顧問弁護士を雇い、業務をお願いすることが多いので、ほとんど行わないのが現状です。
現在日本でも、合併や買収は特段めずらしいものではなくなっています。企業の買収や再編を促す法的基盤が整備されてきており、株主総会においても、株主の信用向上や安定株主の維持へ焦点が置かれております。また、会計制度改革面でも大幅な見直しが行われるとともに、商法においても度重なる改正が行われ、近年では特に重要視されている個人情報保護法など、新しい環境への対応が求められています。さらに企業のグローバル化、リスクマネジメント強化、法令遵守の徹底などにより、人材ニーズは高まり将来の見通しは明るいと言えます。
スキルアップについて
法務の仕事を行うにあたって、やはり実務経験があることは有利ですし、実務経験がないにしても、法律を学んできた人はそうでない人よりは有利と言えます。しかし、絶対条件ではないのです。意外と、働いてキャリアを積んだ後にさらなるキャリアアップを目指してロースクールに通うという方々も多くいらっしゃるようです。
最低限必要なスキルとしては、仕事に優先順位をつけられる判断能力や、関係部署と円滑に意思疎通の行えるコミュニケーション力、また最近の判例などに目を配る情報収集力も必要です。
法務でスペシャリストになりたい、スキルアップして一段上がりたいという人は、資格をとったり英語を仕事で活用できるよう勉強しています。様々なサイトで調べていくと、司法試験の合格までの短期の派遣での仕事もあり、勉強しながら実務も身に付けることができます。しかし、そうなると、かなりの負担は覚悟しなければなりません。
法務の仕事でキャリアを積むにあたり、2つの選択肢がでてきます。ある部門に特化したスペシャリストになるのか、幅広い業務をこなす法務のゼネラリストになるのか。
例えば,Aさんは法学部を卒業した後、就職した会社で商標法を中心に5年間担当しました。しかし、もう少し幅広い担当をしたいと思い、大手外食チェーンへ転職。そこでは特化した業務でなく、法務における様々な業務を経験したそうです。Aさんは希望通りだった為、とてもやりがいを感じることができ、忙しいけれども充実した毎日を送っています。
一方Bさんは、電気関係の企業に入社し、法務にて知的財産に特化した業務を行っています。Bさんは大学で知的財産法を専攻し、その業務につくことが希望だった為、大変だけれども満足した毎日を送っています。技術的な部分まで奥深く知り学ぶことで、発明や特許をコンサルティングできるようになりたいそうです。
それぞれ同じ法務という仕事ながら、違った道に進んでいます。どちらにせよ、学ぶことは多く大変な仕事ですが、自分のやりたい道に進むことでよりやりがいを見つけることができ、そしてそれがキャリアアップにつながっているわけです。それではキャリア設計について見ていきましょう。
将来のキャリア設計
すでに述べたように、法務の中でも進む道によりキャリア設計は変わってきます。Bさんのように特化して業務に就きたいような興味のある分野があるのであれば、その分野を徹底的に勉強することが重要になりますね。Bさんの将来のキャリア設計は知的財産法のスペシャリストになり、あらゆる面から発明や特許をコンサルティングできるプロになり独立する、ということになります。法務という部門は、法律の知識なくては始まらない仕事ですので、とにかく勉強することが多く、仕事量も膨大ですし、いわゆる下積み時代(一人前になるまでですね)は長いと考えていたほうがいいでしょう。しかし、その分キャリアを積み重ね、自信を持てるスペシャリストになった際は、引く手数多の存在になることができます。Cさんの例を見ていきましょう。
Cさんは6年間イギリスに留学し、その後法学部に進学。某商社の法務部に入社し、国際法務を担当。そんなCさんの今後のキャリア設計は、シカゴ大学のロースクールに留学し、アメリカの法律を学び、ニューヨーク州の弁護士資格を取ることだそうです。Cさんの所属している商社は、毎年1人選抜される留学制度を持ち、学費などの面でかなりバックアップしてくれます。Cさんの場合、具体的なキャリア設計があったからこそ、あえてそういった制度がある会社を探し、入社し、1人に選ばれるよう努力することができたのです。
確かにやってみたら興味がでてくることはよくあるかと思います。しかし、具体的なキャリアプランがある人と、何気なく日々実務をこなしている人では仕事に対する姿勢が大きく変わってきます。途中で変更することも踏まえ、現在のキャリアプランを自分なりに考えてみる。そして、分かれ道に出会ったらその度に修正案をだしていく、それが成長(キャリアアップ)していく土台を作る方法となるのです。
年収について
実際、やりたい仕事であっても、やはり給料面は関係ないとは絶対言えませんよね。キャリアアップが年収アップにつながるからこそ、より頑張ろうという意欲になるのですから。そこで法務の仕事の年収を見ていきましょう。
キャリアアップの仕方によりますので、様々なケースを見ていきます。まず、企業の法務に入社し、勤続3年で350〜400万となります。その後、そのまま昇進するというケースですと、5〜10年で主任・係長クラスになったとして400〜700万、10年で係長・部長クラスになると600〜1200万となります。また、主任・係長クラス後、転職し、外資系企業で国際法務を携わること2〜3年で900〜1400万となります。
その他にも、主任・係長クラス後、転職し、ベンチャー企業にてM&Aの契約業務に携わること2〜3年で800〜1300万となります。また、行政書士・司法書士両資格を得て勤務書士になった場合700〜950万となります。(全ての数字に関して、企業や個人により異なりますので、あくまで相場です)
見ていくとわかりますが、これと言って、このようにキャリアアップすると飛びぬけて年収が上がるということはありません。どの部門も大変な仕事ですので、自分自身が一番興味の持てる、やりがいの持てる、働きやすい職場で働くことをお薦めします。ただし、転職をする場合の注意点としては、上を見すぎて中途半端な状態でしないこと。上記を見てもわかりますが、転職によるキャリアアップの場合、ほとんど(資格を得ない場合)が主任・係長クラス以上になってから転職した場合の年収アップの事例です。入社した企業で、腰をどっしりと据え、足元をしっかりと見て基盤を築くことが非常に重要な職種です。今の職場ではこれ以上自分のスキルを上げることができない!と判断できるまでは、吸収できることを徹底的に吸収してキャリアアップにつなげましょう。
転職するにあたって
もう既に法務で働いている人と、そうでない人がいるかと思います。まず、とても興味はあるけれども、自分に合っているか、よくわからないという人には、まずは派遣で働いてみることをお薦めします。はたらこねっとをのぞいてみてください。アシスタントなど未経験でも始めやすい職種があります。そこで一度仕事内容を実感しながら、実際に働いている社員を見ることで、正社員として働き出した後での相違というのが少なくてすむでしょう。
また、正社員としてキャリアを積んでいきたい人は、DODAをのぞいてみてください。専門性の高いものから、大企業から、様々な求人があります。まずは自分自身が法務という領域の中のどの部分に携わりたいのかを把握し、英語を活用したい!など自分の希望を織り交ぜてキャリア設計をたててみるといいでしょう。夢は大きくとよく言いますが、キャリア設計は現実的でなければならないけれども、高ければ高いほど人は頑張れるものだと思いますよ!